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書きながら考えているので考えたことを書いてるんじゃなくて書いたものが考えたことです。もしかするとなにも考えていないかもしれない。

『ソードアート・オンライン』はもっとおもしろくなり得たしなって欲しかった。

※ネタバレしています。



ソードアート・オンライン』についてあぁもったいないなぁ惜しいなぁもったいないなぁじつに、などと近頃は考えていた。

 そんな感想を持ってしまうのは、ある意味ではこの世界設定がとてもよくできているからだ。MMORPGで遊んだことのある人、もっと言えばファンタジー物語に没入したことのある人間なら、誰しもその世界の住人になってみたいと願ったことがあるだろうと思う。そんな願望をうまく描いたのだからこれだけ人気があるのだろうし、僕もこの設定を始めに聞いたときにすごくわくわくした。そして実際に読んでみて、とてもおもしろかった。

 しかしその一方でとても残念と思う。もっとすごい作品になり得た、という印象がどうしても拭えない。


漂流教室』とか『バトル・ロワイアル』とか『ドラゴンヘッド』とか『アイアムアヒーロー』とか、色々あるけどそういった突然に日常を奪われる系統(なんていうんですかね、こういうの?)のような、理不尽で残酷な現実に不当に放り込まれた人間の行動を描いた群像劇、仮想世界にフルダイブすることができるようなテクノロジーを得た世界はどんなものになりうるかというSF的仮定、イマジネーションあふれるファンタジー世界における神話的物語。どれもまともに書いたらそのテーマひとつで大作になってしまうけど、そういうものがうまく絡み合ったらすごい物語が成立しそうじゃないですか。

 だのになんですか、冒頭から主人公は最強で、よくわからないうちにヒロインとくっついて、愛の力で世界の法則であるシステムでさえ乗り越えられた! どーん! みたいな。ラノベだからってそれでいいんですか。まさか一巻でアインクラッド脱出すると思わなかったよ。あと作者自身も八巻のあとがきに書いていたけど、不幸が起こることの必然性が弱いので、死とか不幸が、物語を成立させるための機能のみに成り下がっているのは悲しい。


 といって、実際のところ、この作品がそういう重厚なものであるべきだとはさすがに思っていない。そういうものとして読んでしまえばおもしろいし、少年ジャンプで育った僕はご都合主義も嫌いじゃない。でもさー! もっとさー! 俺の好きなこんな感じで書かれててもさー! よかったんじゃないの! みたいな。

 つまり、自分の妄想が実現しなかったことに対してだだをこねたい気分がここ最近の僕なのでした。消費者の欲望は果てしないのである。


 ちなみに、アニメは残る最終話以外すべて見ているけど、小説のほうは8巻までしか読んでいない。9巻以降は新章に入っているらしいので完結したら読もうと思っている。はやく読みたい。WEB上で公開されていた際にとても人気だったと聞いているので、楽しみにしています。