B06

書きながら考えているので考えたことを書いてるんじゃなくて書いたものが考えたことです。もしかするとなにも考えていないかもしれない。

Kindleが届いた。

きのう、いや、もうおとといですか、Kindle Paperwhiteを手に入れました。お届け予定は十二月のはじめということだったのだけど、思ったより早く届いてうれしい。


電源をつけてはじめに感じたのは、思ったよりはきれいじゃないな、ということでした。どれいっちょ評価してやろうじゃないか、みたいないやらしい目でよく見てみると、案外かすれや前ページの残像があったりする。こんなことを言うと偉そうですけど、ちがうんですよ。冷静になってよく見てみると、ディスプレイはかなりきれいです。かすれも残像も目を凝らさなければ見えないようなものだし、よく言われる画面遷移時の白黒反転もあまり気にならない。あら探しをしてしまったのは、画面がきれいだ! これはもしかすると紙よりきれいなんじゃないか! これは素晴らしいキンドルヤバいキンドルサイコーフォー! みたいな声をよく聞いていたので、むやみに高まった期待と、ほんとにそんなにいいものなの? という疑いとで自分を保つのがたいへんだったからです。これ届くまでクリスマスのプレゼントを待ってる少年の気持ちだった。たかが電子書籍になにをそんなに浮かれているのだと言われれば自分でも不思議ですけど、たぶん機械的なものにはだいたい玩具的な、あるいは未来的な期待を抱いてしまう性分なのかもしれない。

期待感ということで言えばもうひとつ。しばらく触っていてなんかわくわくの方向を間違っていたのに気付いたんだけど、iphoneipadを初めて触った時のような新感覚はありませんでした。当然だ。これは電子書籍であってそれ以外のなにものでもない。なにを期待していたのか自分でもわからない。もう少し落ち着くべきだと思った。

いま気付いたんですけど、人がなにか新しいものに触れるときというのは、それがどういうものなのか知りたいという欲求からかなんなのか、感覚は鋭敏になりますよね。その状態では、日常の感覚のときとはまた見えるものがちがってくる。そして期待感というものがさらに厄介で、それがそのまま新しいものを信奉する理由になったり、反対に期待と現実との落差を実際以上に大きくしたりしてしまう。つまり未知のものと遭遇したときはあたまがおかしいときなので、それを自覚しておきたいなぁと気を引き締めていく所存でございます。


ここまで書いてなんか想定したものよりネガティブな文章になってしまったんですけど、実際はKindleちょういいです。軽いし、文字はきれいだし、小説やなんやかんやを何十冊も持ち歩けてしかも片手操作に苦がない。満員電車に乗った時に吊り革をつかんで片手で文庫本を開いたはいいけどページめくるときに片手じゃむずいから吊り革から手を離してページをめくるとその動作が隣の人に邪魔みたいでいちいちちょっとすいません的な空気になるあの感じが嫌だからけっきょくおっさんの頭頂を眺める屈辱を味わわないですむキンドルサイコーフォー!! みたいな感じです。僕は何冊かを並行して読むことが多いんですけど、これからは出かける直前にどの本を持って行くべきか悩むことがなくなるのもうれしいです。

Kindleに限らずだとは思うんですが、本の電子化にたいして個人的にもっとも魅力を感じるのは、書籍内の全文字列を横断して検索できることじゃないかと思います。どこかで読んだ一文をふと思い出して、でもどの本に書いてあったか思い出せないとき。いま読んでいるものと過去に読んだものに淡い関連を見出したとき。これまで触れてきたすべてのテキストに簡単にアクセスできれば、と夢想することはとても楽しい。現状では手持ちの紙の本はそのままにしてあるので理想とはだいぶちがうけど、手間とお金を惜しまければ現実的なものにはなってきてはいますよね。

さまざまな端末で好きなときに好きなテキストに簡単にアクセスできる。そういうのってわくわくする。次はスキャナと裁断機がほしいです。


Kindle Paperwhite

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